代表あいさつ

 彩星の会の歩みに、さらなる彩りを

 それは午後9時過ぎ、職場で残業をしていた時でした。携帯に父からの着信。部屋の隅に移動して電話に出ると、「お母さん、若年性アルツハイマーやと」。もしかしてと思っていた病名を告げられました。さーっと血の気が引いていく感覚は、今でもはっきり覚えています。       
 任意団体である彩星の会が活動を始めた頃のできごとです。

 若年性認知症に関する情報も少なく、病気そのものへの理解も乏しく、本人や家族の暮らしを支える仕組みも十分ではなかった時代に、当事者、ご家族、専門職が思いを寄せ合い、この会を育ててこられました。その積み重ねがあったからこそ、今、診断直後の不安の中にいる方、介護のただ中にいる方、介護を終えた方、そして本人を支える多くの人が、ここで思いを分かち合うことができているのだと思います。

 この25年の間に、社会は大きく変わりました。インターネットやSNSの普及によって情報にアクセスしやすくなり、相談先や居場所も少しずつ増えてきました。一昨年には、認知症基本法の施行、2剤目の治療薬の承認、認知症施策推進基本計画の閣議決定など、認知症をめぐる環境が大きく動きはじめました。けれども、制度や理念が整ったからといって、本人や家族が直面する不安や葛藤がなくなるわけではありません。診断を受けた時の衝撃、これからどうなるのか分からない心細さ、暮らしや仕事、気持ちの揺らぎは、今もなお切実です。

 だからこそ彩星の会は、時代が変わっても変わらず、本人と家族が「そのままの気持ち」でいられる場でありたいと思います。制度や病気に関する知識や情報を得るだけでなく、言葉にならない不安も、迷いも、悔しさも、そして、ふと心がほどけるようなひとときも、安心して持ち寄れる場所でありたい。そのぬくもりこそが、会員の皆さまとともに25年歩んできた彩星の会の持つ力です。新緑のあざやかさ、風のやわらかさに、心が少し軽くなるこの季節、これまでの歩みにあらためて感謝しながら、これからも皆さまとともに、一歩一歩、彩りある歩みを重ねていきたいと思います。

2026年 4月
彩星の会代表 大野 裕子(おおの ひろこ)

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■大野裕子《プロフィール》
 大分県大分市出身、杉並区在住
 慶應義塾大学文学部卒業
 目白大学大学院生涯福祉研究科修士課程修了(社会福祉学修士)
 株式会社イトーヨーカ堂子供衣料担当ディストリビューター
 東京都議会議員事務所職員
 社会福祉法人ぐらんま理事長(兼事務局長)(現職)